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会社の近所にある喫茶店に入り、彩響は周りを確認した。しばらくそこにいる人たちの顔を見ていると、誰かがこっちに手を振るのが見えた。彩響はそのテーブルに向かい、反対の席に座った。
「ご無沙汰しております、Mr.Pink。」
「ハニー、突然呼び出してすまないね。元気そうでなによりだ。」
「おかげさまです。で、今日はいかがなさいましたが?」
突然Mr. Pinkから連絡が来たのは丁度昼休みの時間だった。元々彩響に昼休みという概念はないのだが、少し余裕があったのでこうして喫茶店で待ち合わせをすることになった。彩響がドリンクを頼むと、Mr. Pinkがなにか白い紙を渡した。
「我が社は定期的に顧客満足度を図るためアンケートをしている。メールでも良かったが、良い機会だったので顔を合わせた方がいいと思ったので。」
「なるほど、承知しました。」
「…で、どうかな?ハニーはまだ彼を首にしたいのかな?」
Mr. Pinkの質問に、彩響は思わず「あっ」、と声を出した。そうだ、確かそんなことを言った。少し悩んだが、彩響は正直になろうと決めた。
「すみません、私が軽率でした。成、いや…河原塚さんを首にしたくないです。」
「ほお?気が変わったのかな?」
「そうです。実際、彼にはすごく助けられています。」
「詳しく聞かせてくれ。」
タイミングよく注文したコーヒーが運ばれてきた。彩響はそれを一口飲み、自分の家にいるあの「ヤンキー家政夫さん」について話し始めた。
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