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「そうですね、まずは…物忘れが減りました。部屋が常にきれいですので、なにがどこにあるのかすぐ分かるようになりました。恥ずかしいことですが、もの忘れで結構時間を無駄にしていたので…ものを探す時間とか慌てる時間に余裕ができて、タクシー代も減っています。」
「そうか、それは素晴らしい。他は?」
「最初はよく分からない掃除に付き合わされ、いろいろ小言が多くてイライラしていましたが…徐々に、変化を感じます。朝ごはんをしっかり食べるのでドーナツとコーヒーも食べないし、毎日お風呂で癒やされて、肌もきれいになりました。体重も自然に減った気がします。最近良く言われるんです、「肌がきれいになった」とか。」
「おそらく疲れと部屋の汚れで隠れていたハニーの本当の美しさがやっと表に出たのだろう。」
「え?ええ、まあ…。」
いきなり褒められ、反応に困った彩響は視線をそらし、コーヒーを飲んだ。その反応が楽しかったのか、Mr. Pinkがにっこりと笑う。
「我が社の社員はみんな優秀で立派な青年だ。特に河原塚くんはとても明るくて頼りになる青年だ。私も彼のような人材に出会えたことを心から感謝しているよ。」
「そうですね、じつは一つ質問ですが…。」
「なにかな?」
「彼は、どうして家政夫になったのですか?家政夫になるには、優秀すぎる気がしますが…。」
「では、ハニーはどんな人が家政夫になるべきだと思うのかな?家政夫が優秀だと、なにか問題になるのかな?」
(あちゃー。)
Mr. Pinkの反応に彩響は自分のミスにすぐ気づいた。そしてすぐ謝罪した。
「すみません、そういう意味ではないです。ただ、彼が家政夫になる前はなにをしていたのか、ふと気になり…。」
「ハニーのような反応を見せる人は今更珍しくもないので、気にしなくていいよ。ただ彼は今の仕事をとても気に入っている。なので彼の前で今のような発言はなるべく避けてくれるかな?」
「あ、はい…注意します。」
「しかし、最初彼を首にしたがっていたハニーが、彼の過去も気になり始めていることは、いい変化だと思うよ。社長としてとても嬉しい。これからも彼のことをよろしく頼むよ、ハニー。」
その後、他愛のない雑談を交わし、Mr. Pinkはアンケート用紙を持って帰って行った。成が昔なにをやっていたのか、その話は結局最後まで出てこなかった。
(まさか、犯罪者とかではないよね…。)
会社に戻りながらふと思う。いや、まさか…彩響は頭を振りながらエレベーターに乗った。一緒に乗った佐藤くんと少し雑談しながら、ふと考えた。
(本人に直接聞けばいいじゃん、それくらいは親しくなったと思うし。今度聞いてみよう。)
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