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想像もしなかった単語に思わず大きい声を出してしまった。理央はしくしく泣きながら事情を説明した。
「夫が浮気しているの。今まで私には出張に行くとか言って、あの女と遊んでたらしい。」
「そんな…」
「昨日これで大喧嘩したの。でも、あの女との関係をやめる気はないって言ってた。バツイチになって損するのは私だから、黙っていなさいって。」
「なにそれ、土下座して謝るべきじゃないの?旦那さんの家族には言ったの?」
「言ってない。でもあの家族元々私のこと好きじゃないから、何言われるか…。」
元々授かり婚で、仕方なく結婚するような感じはしたけど、まさかここまで図々しいとは…。彩響は長いため息をついた。これは、まるで自分の母を見ているようで、胸が苦しくなる。遠くでなにも知らずにただ楽しく遊んでいる亜沙美を見ると、更に苦しくなった。
「…亜沙美のことが心配ね。」
「私、離婚しても大丈夫かな。亜沙美のこと、きちんと育てられるのかな。私は、結婚のために、亜沙美のためになにもかも諦めて今までやってきたのに…。」
「……。」
彩響は母のために、そして理央は娘のために。二人はなにかを犠牲にしてここまでやってきた。犠牲にした分、その分幸せになれると思って、だからこの道を選んだのに…。彩響は親友の手をぎゅっと握った。
「…理央。どんな選択をしても、私はあなたの味方よ。だからいつでもなにかあったら相談して。」
「うん、ありがとう…。」
「ママ!」
亜沙美が早足でこっちへ走ってきた。理央の手を引っ張り、自販機の方を小さい手で指す。
「おれんじじゅーすのみたい!」
「ジュース?」
「さいきおばさんものもう!いっしょにのもう!」
「あ、まったく…ちょっと待ってて、彩響。買ってくるから。」
手を繋いで歩いて行く母娘を見て、彩響は苦笑いをした。
あんな小さい子に、自分と同じ苦しみを味わせたくない。なるべくきちんとした家族で、素直で優しい大人になってほしいのに…。
(いつだって、物事は希望通りにいかないんだよね…。)
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