掃除編-4章:ヤンキーにも過去はある

13/15
前へ
/164ページ
次へ
聞き慣れていない単語の出現に、彩響は耳をすます。雛田くんの質問に成が答えた。 「なんの話だよ。サッカーはもうとっくにやめたってば。」 「マジで?全くやってないの?俺の兄貴、あんたのこと知っていたよ。俺のこと信じないから、写真見せたんだよ。」 「確かに、あの延長戦のゴールはすごかった。あのゴールで決勝戦行ったよね?」 「お前ら、過去に住んでいるのか?俺は現在に住んでいるからな。」 (なに、成って…サッカー選手だったの?) 早速ネットで『河原塚成』と検索をする。すると約5年前の記事が出てきた。マウスを動かし、その記事をクリックすると…。 「オリオンズは細かくパスをつなぐ形だけではなく、ロングボールを使ったシンプルな攻撃も見せる。…田中がペナルティエリア内で倒され、PKを獲得。このPKを二宮が決め、待望の先制点を…だが、終了間際にドラマが待っていた。藤田のCKから河原塚がヘディングシュートをたたき込み、土壇場で同点に…。」 (本当に?本当にサッカー選手だったの?) 道理でいい体格しているわけだ…そう思いながら、彩響はいくつかの記事をクリックする。見た感じ、活躍していたような記事が沢山ある。それなりに活躍して、そして…ある時期から彼の名前が消えているのに気がついた。記事がなくなったのはー約2年前から。なぜ彼の名前が消えたのか、その理由はどこにも書かれてなかった。 (なんか…勝手にヤンキーとか呼んでいたけど…やはり人間勝手に判断しちゃいけないもんだね…。) 気になっていた成の正体を知ると、自然となぜ彼がサッカーをやめ、家政夫になったのか気になり始めた。もう少し探るとどこかに出るのではないかと思い、あっちこっちネット上を巡っていると、外から雛田くんの声が聞こえた。 「彩響ちゃん、俺たちもう帰るよー。」
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加