掃除編-5章:嵐のあと

1/20
前へ
/164ページ
次へ

掃除編-5章:嵐のあと

「お茶とか飲む?」 「あ、ううん、大丈夫。」 「じゃあ俺ベランダの掃除やってるから、なんかあったら呼んで。」 「うん、分かった。」 食卓でご飯を食べた後、成はベランダへ向かった。彩響はそのまま座り、Treasure Noteに今朝思い出した話を書き込んだ。なにごともない、穏やかな休日。平和であるのはありがたいことだが…彩響はふと先週のことを思い出した。 成はあの日、なにもなかったように帰ってきた。そして彩響の前で頭をぺっこり下げた。喧嘩を覚悟していた彩響はこの反応に、逆に驚いてしまった。 「ごめん、さっきは俺が悪かった。」 「え?いいや、そんな…。」 「全部忘れてくれ。そして…会社にも黙っていてくれるか?」 「それはもちろん…私も悪かったので…。」 「じゃあ、今回はお互いなにもなかったことにしよう!それでいいな?」 「は、はい…。」 その後、成は本当にいつもの姿に戻り、二度と大声を出すことはなかった。わざと気まずい空気にさせる理由もなかったので、彩響もそれ以上「なぜサッカーをやめたのか」しつこく聞いたりしなかった。正直、気にはなるが…人間誰しも言いたくない記憶一つや二つくらい持っているだろう。自分もそうであるように…。彩響は再びノートの上でペンを動かした。そして、そのときー。 「ピンポンー!!」 マンションのチャイムが突然鳴った。特に宅急便を待っていたわけでもなく、疑問に思い彩響はインターホンの画面を確認した。そして、この突然の訪問の相手を確認した瞬間、彩響の瞳が揺れた。チャイムを聞いた成がエプロン姿でこっちへ来る。それを見ると、更に心臓がバクバクと動き始めた。 「誰か来た?」 「や、や、や…!」 声がきちんと出ない。慌てる彩響を見て、成も一緒に慌てる。状況を把握してない彼が目を丸くして聞いた。
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加