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もう一回、強い痛みが頭を刺激する。今度は本当に耐えられず、床へ座り込んでしまった。上から母の息巻く声が聞こえる。悔しさに耐えられず、狂気の目で娘を見下ろしていた。
「育ててあげた母親に、なによ、その態度…あんたなんか、どっかの孤児院にさっさと捨てればよかった!」
「じゃあそうすればよかったでしょ!こんなに振り回されるくらいなら、さっさと捨てられた方がマシだったよ!もうどうでも良いから、早くそれ返して、早く!!今更お母さんに子どもの頃殴られたことで、損害賠償金とか請求しないから!」
「こっ、この…!!」
もう一回母の手が上がる。もうこれ以上黙って叩かれない、そう思った彩響はぱっと立ち上がった。母に向け口を開けた瞬間、誰かが彩響の肩を握った。振り向いたそこには、成が立っていた。
一瞬彩響を見た彼が、口を動かし、静かな声で何かを言った。口の形で、それが「遅くてごめん」と言っているのが分かった。
彩響を止め、成が二人の間に立つ。そして大きい声で、母に叫んだ。
「早くそのノート返せ、このクソババァ!これ以上こいつを殴ったら、俺がお前を殴るからな!」
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