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しばらく走って、走って、立ち止まる。息を整えて、又走る。それの繰り返しをしていると、いつの間にか周りが徐々に暗くなってきた。沈んでいく太陽をじっと見つめ、彩響はさっきの出来事を考えた。
きっと、お母さんは絶対謝らない。自分なりの愛情だと言うに違いない。もう二度と関わりたくない。あの狂気あふれる目を、思い出すだけで吐き気がするー。
(それにしても…)
さっきの成の反応には大分驚いた。普段ニコニコとお人好しでいた分、いざブチ切れて暴言吐き出す姿は結構衝撃的だった。実はさっきの姿が本来の姿で、いつものは偽りだったとしても…。
(私のために、あれだけ怒る人は初めて見たな…。)
いつでも自分の味方になってくれると信じていた母は、なにかある度に真っ先に彩響を攻めた。社会に出てからも、大抵のことは自分から謝るばかりで…。だから成の反応はとても新鮮でー
(とても…ありがたかった。)
ふと見慣れた看板が目に入り、彩響は足をとめ周りを確認した。いつも通っている、会社と近い書店だ。一瞬別の店舗かと思ったけど、彩響はすぐ自分が家からここまで、6駅分の道を歩いてきたことに気付いた。道理で足が痛いわけだった。彩響はしばらく悩んで、書店の中へ入った。
「いらっしゃいませー。」
店員の声を聞きながら、小説のコーナーに入る。タイミングよく、「本木健」の新刊が見えた。彼は大物作家で彩響も好きな作家だ。新刊を手に取り、中身を軽く捲ると、以前成と一緒にここに来たことを思い出した。
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