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「ハニー、君だと思ったよ。偶然だね。」
「Mr. Pink…ご無沙汰しております。」
Mr. Pinkは彩響が戻した本を取って、内容を確認する。彼も作家を知っているようだった。
「本木健氏の新作か。彼の本は私も読んでいるよ。これ、買うのかい?」
「いいえ、これは又今度…今は手元になにも持ってないので…。」
「おかしいね。財布も、携帯も、鍵もない。どうして?」
「それは…ちょっと急いでいて…。」
どう説明すれば良いのか分からず、戸惑う。空気を読んだMr. Pinkが先に質問してくれた。
「急いで、何かから逃げたのかな?」
「ええ、まあ…そんなことです。」
「それは懸命な判断だ。たまにはその状況から自分自身を消すことも必要だ、そうすると冷静に判断できるからね。」
そう言って、Mr. Pinkは持っていた本を彩響に渡した。その行動の意味が分からず、ジロジロ見ていると、Mr. Pinkがポケットから自分の財布を出した。
「その本は私が買って差し上げよう。」
「え?いいえ、そんな、大丈夫です。後で自分で買います。」
「ハニー、これは些細なことだが、私にとってはとても意味のあることだよ。君がこれで少しでも元気を出して欲しい。」
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