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Cinderella社の応接室に入り、彩響は言われた通りソファーに座った。しばらくすると、Mr. Pinkがお盆にティーセットとパウンドケーキを乗せ入ってきた。とても美味しそうなそれを見て、彩響は今日自分がなにもちゃんと食べていないことに気がついた。
「このアーモンドケーキも中国から買ってきたものだよ。お茶との組み合わせが良いって、店員にお勧めされてね。」
「ありがとうございます。いただきます。」
甘いケーキと少し苦いお茶を飲むと、少し緊張が解けるのを感じる。気持ちいい香りを感じながら、彩響はすぐケーキを食べ終えた。残りのお茶をゆっくり飲んでいると、向き合いのソファーからMr. Pinkの視線を感じた。我を忘れもぐもぐ食べていたのが少し恥ずかしくなり、彩響はアンティークカップをテーブルの上に戻した。
「さて、なにから逃げ出してきたか、教えてくれるかい?」
一瞬迷ったけど、彩響は素直に答えた。
「…自分の母からです。」
「お母さんから?」
「そうです、予告もせず私の家に現れて…大喧嘩になりました。そして、そこにいた成まで巻き込むことになり…。耐えられなくてその場から逃げてきました。」
「それは大変だったね。ーで、喧嘩の理由は?」
喧嘩の理由は、表面的にはただノートを勝手に破ったくらいのできことだけど…その奥に、とても辛い記憶が刻まれている。それを思い出すだけで、胸が苦しくなる。
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