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「…私は、一回破婚しています。それ以来、結婚という言葉にとてもプレッシャーを感じます。」
「それは、大変だったね。」
「母はすべての原因が私にあると思い、私を強く責めました。でも、元婚約者は、私のことを全く尊重してくれない人でした。尊重ところか、無視するばかりで…私のキャリアも、感情も、なにもかも自分に合わせるべきだと要求しました。それが女の役目だと。」
「若者の色恋沙汰に私が口出しする権利はないが、それは別れて正解だったと思うよ、ハニー。彼はいい男ではないし、いい旦那になれそうもない。どうも21世紀の人だとは思えない台詞だ。」
「さあ、どうでしょう。Mr. Pink、あなたこそ未来からやってきた人かもしれません。私はただ、人生のパートナーになるなら、私が相手をサポートするように、相手も私のことを認めて、サポートしてほしいだけです…。」
話を聞いていたMr. Pinkが立ち上がり、オフィスの窓の方へ移動した。彼はすこし町の風景を眺めて、すこし微笑んだ。
「君はとてもいい結婚観を持っているようだね、ハニー。ハニーの考えに積極的に賛成するよ。結婚経験者としてね。」
「え…。」
(なんか、さり気なくすごい話を聞いたような…。)
その「結婚経験者」とはどういう意味なのか、気にはなったが、結局なにも聞けなかった。Mr. Pinkは穏やかな顔で話を続ける。
「誰かが一方的に犠牲になる関係は結局長くは持たない。これは夫婦関係だけではなく、人間関係全般に通用する話だよ。…今のハニーに、いつかいい男が必ずしも現れるとか、そういうお世辞は言わないでおこう。ハニーはもうすでに立派な考えを持つ、立派な成人だ。結婚しなくても、きっと自分で人生の道を探し出すだろう。お母さんのことは気にしなくていい。お母さんとハニーはもう別人だ。囚われる必要はない。」
はっきり言ってくれるその言葉に、とても心が癒される。そう、その通りだ。母のことはもうどうでもいい。自分が今したいこと、それは…。
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