掃除編-5章:嵐のあと

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「…私、幼い頃からずっと作家になりたいと思ってました。母はそれをバカバカしいといってましたけど。」 「作家になることがバカバカしい?ならノーベル賞を受賞している数多い作家は、全部バカなことをしていると言ってるのか?」 なにを言っても中々感情を出さないMr. Pinkだったが、今回はさすがに呆れたのか、自分のまゆをしかめる。それを見て、彩響は彼も結構な本好きだと気付いた。 「そんな賞を貰っている人は特別な才能を持っている人たちで、私にはそんな才能は全くないと、そう言っています。」 「そうとは限らない。誰もが最初から作家だったわけではない。物書きは、その人の人生をかけ、徐々に完成していくものだ。だから、ハニーが絶対作家になれないというお母さんの考えは間違っている。今から、いくらでも素晴らしい作家になれる。」 (人生をかける、物書き…。) Mr. Pinkの言葉が心の中で響く。もしかしたら、自分にもできるかもしれない。彼がいう通り、自分の人生をかけた、そんな物書きが…。 Mr. Pinkがソファーに戻り、彩響の向かいに座った。彼はとても優しい顔で、慰めるように言い続けた。
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