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「これ、来月締切だけど、なんとか間に合わせない?」
成が目をキラキラ光らせて、質問する。これは…出て欲しいんだね。彼の意図は伝わってきたが、彩響は首を横に振った。
「いや、間に合うかどうかはさておいて…。私、まだこんなコンテストに出られるくらいじゃないと思うよ。」
「なに言ってるんだよ、宝くじも買わないと当たらないんだぞ?」
「あんたこそなに言ってるの、宝くじの問題じゃないでしょ?」
「なあ、これマジいいチャンスだぜ。落ちてもいいと思って、参加してみなよ。人間なにもかも経験だろう!」
またどうしてそんなに前向きに考えられるのだろう。最初はこんな態度がなんだか嫌で、見るたびイライラするのを感じた。しかし、今は違う。今は…こいつみたいに、もう少し前向きな人間になりたいと思う。
「…そうだね。もうちょっと頑張ってみようかな。」
「…!やるの?やるんだな?!」
「誰かさんがこんなに推してくれてるんだし、やってもいいかなーって。」
「大丈夫、うまくいくって。一緒に頑張ろうぜ。…て言っても、俺、特にやることないけど。」
「そんなことないよ、だって…。」
ここまで言って、一瞬口が止まる。とても助かっている、本当にありがとう、いつまでもここへいてほしい…このような言葉が頭の中でくるくる回る。しかし、なかなか素直になれず、彩響は言葉を飲み込んだ。
「…だって、あなたがいつも家事をやってくれているから、いつも助かっているよ。おかげさまで私も仕事に集中できるし。」
「それはもちろん、それが俺の仕事だから。気にするなよ、やるべきことをやってるだけ。俺、家政夫だぞ?」
成がまた笑顔を見せ、そのまま部屋を出ていった。部屋で一人、パソコンの画面と向き合った彩響もなんだか気持ちが高まるのを感じた。
(うん、やってみよう。)
まずはこの原稿を完成させよう。そして、挑戦しよう。うまくいかなくても、これはきっと自分の人生で大きな意味のある事件になる。
そして、終わったら、素直に感謝を伝えよう。なかなか素直になれない自分だけど、今回はきちんと伝えよう。ありがとう、いつも助かっているよ、と。彩響は机の隣においてあったTreasure Noteを見ながら、もう一回決心した。
「となったら、時間がない。頑張れよ、私…!」
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