掃除編-6章:近づく距離、揺れる思い

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原稿を書きはじめて約一ヶ月。連載サイトのカテゴリーから「完結」という文字を選択し、「保存」のボタンを押す。その後、彩響はしばらくぼーっと画面を見守った。この瞬間だけを待っていたのに、いざこうして終わらせてみると、実感するのになかなか時間がかかった。 (ブックマーク数、50人…始める前は一人でも読んでくれる人がいれば嬉しいと思ったけど、ここまで来たらもう少し人が増えたら良かったなーと思うんだよね。) いや、とにかく今は無事終わらせたことを喜ぶべきだ。彩響は椅子から立ち上がり、リビングへ出た。 「成!!原稿終わった!」 「え?終わったの?マジで?!お疲れ様!」 床を掃除していた成がすぐ反応する。それを見ると、彩響もついテンションが上がる。やっと原稿が終わったことが嬉しく感じて来た。成がクフロアワイパーを持ったままこっちへ飛んできた。 「うん、ありがとう。大変だったけど、なんとか終わったよ。」 「じゃあ、さっそくお祝いしないと!早く着替えて。」 「え?出かけるの?どこに?」 「なに言ってるんだ、青春燃やすならあそこしかないだろ。さあ、早く用意して!」 「え?ええ??今から?もう夜…!」 「つべこべ言わない、早く!」 言われるまま外に出ると、成が自分のバイクに乗って現れた。彩響の近くまで来ると、なにも言わずにヘルメットを被せ、そのままバイクに座らせる。 「ちょっと、私バイクなんか乗ったことない…!」 「人生初バイク体験おめでとう!!さあ、しっかり捕まってろよ、行くぜ!」 派手な音と共にバイクが走りだす。なんなの、私、まさかどっか拉致られるの?!やっと人生やり直そうと思って、頑張ったのに、こんな形で終わっちゃうのー?! 「ヤダ、帰してー!!きゃああああーーー!!」
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