掃除編-6章:近づく距離、揺れる思い

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空の声が、聴きたくて…. ふとテレビで流れていたCMの歌を思い出す。まだ冬にはなっていないが、夜の海風はすこし冷たい。彩響は水面とともに揺れる月の影を見ながら、ため息をついた。 「これが、あんたが言う『青春を燃やす』とこ?」 「あれ、もしかして嫌だった?最適な場所だろ、夜の海辺って。」 「いや、そういう問題じゃなくて…。」 いきなりバイクに乗せられ、わけも分からずそのまま走ること約1時間。やっとバイクが止まったのは人気の少ない小さな海辺だった。真夏の熱情を籠もっていたような海の家はもう閉まっていて、ゆったりと動く波の音だけが聞こえる。夜の海とは、なかなか古いセンスだな…と思いながら、彩響が周りを見回した。 「…ここ、以前もよく来てたの?」 「そう、1、2年くらい前まではほぼ毎日来てた。ここ、昼は人多いけど、夜は誰もいないから、頭冷やすには丁度いい。」 「頭冷やしたい出来事がいっぱいあったの?」 「まあね。」 そう言って、成は砂浜の方へ向かう。大きな足跡を残しながら、ずっと前に進むと、こっち へ手を振った。潮風に揺れる彼の短い髪の毛がキラキラと光る。海と、イケメンと、月。絵になるその風景を眺めていると、成が叫んだ。 「こっち来なよ、彩響!風が気持ちいいぞー!」 なにかに取り憑かれたように、彩響もそっちへ向かう。少しずつ近づく距離が、大したことでもないのに、なぜが胸をドキドキさせる。手が届く距離まで来ると、成がそのまま砂浜の上に座った。隣をパンパン叩かれ、彩響もその隣に座る。 「…まあ、認めるよ。確かに、いい場所だね。」 「だろ?」
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