掃除編-6章:近づく距離、揺れる思い

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「でも次は行き先くらい教えて連れてきなさい。本当に変なところへ拉致されると思ったから。」 「へへっ、そこはサプライズ的な感じ。でも次からはちゃんと言います。」 彩響の言葉に成が誤魔化すように笑う。その顔に心が揺れるのは、きっとこの場所のせいだ。そう、すべてこの海のせいに違いない。 「終わった感想は?大学の受験終わった高校生の気分?」 「え?いや、どうかね…私は受験終わった日もバイトしに行ってたから、そこに比べてもね…。」 「うわ、マジかよ。どんなバイトしてた?」 「カレー屋とか、ラーメン屋とか、チラシも配ったし、パン屋でパンも売ってた。居酒屋でビールも運んだ。高校生になってから就職するまではずっと、なにかしらやってたね。」 「すごい経歴だな。俺はボールしか蹴ってないのに。」 「いや、あなたは選手だったし。ボール蹴って当たり前でしょう。」 「まあ、サッカーは好きだったから後悔はしないけど…もう少し他のこともみていたらよかったな、と思うときはあるよ。」 (サッカーの話、聞いてもいいのかな…。)
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