掃除編-6章:近づく距離、揺れる思い

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暗い部屋の中。布団を被って、身動きもしない。成はずっと蹲り、時計の音を聞いていた。今でも外の世界ではみんなの時間が流れている。もう既にシーズンは終わっていて、又来年にはまた新しいシーズンが始まる。何人かはプレミアリーグに出るとの話も聞いた。本来なら、その場に自分もいるはずだった。もっといい成績をだして、もっと広い世界へ、もっと明るい世界へ…。 「…成。」 ドアが開く音がして、母が自分の名前を呼んだ。成はなにも言わず、そのまま寝るふりをした。母はなにも言わず中へ入ってきて、ベッドの隣に座った。 「成、起きてるでしょう?ちょっと話せる?」 「……。」 「いいよ、なら聞くだけ聞いて。」 「……。」 「成、いつでもいいよ。私は待つよ、みんな待ってるよ。焦る必要もないし、ただゆっくり、時間をかけて考えてみて。」 母は幼い頃からずっと自分をサポートしてくれていて、誰より心強い味方だった。いつだって自分のことを誇らしく思ってくれて、成績がでないときもその態度は決して変わらなかった。それが、今はこんな情けない格好で…申し訳なくて、顔も見られない。成はもっと自分の顔を枕に深く埋めた。 「…そう、確かに、あんたは有望な選手だったよ。それはとても誇らしく、すてきなことだった。でも、今サッカーができなくなったから、だからあなたが誇らしくなくなるとか、そういうことはないよ。サッカーをもし、しなくても、どんな仕事をしても、あなたは私達の立派な息子で、立派なお兄ちゃんだよ。それだけは忘れないで。」 そう言って、母は成の頭をポンポン叩いて、立ち上がった。ドアが閉まる音がするまで、成は涙を必死で堪えた。そして結局、声を殺して枕がびしょ濡れになるまで泣いた。泣いても泣いても涙が止まらなかった。 布団から出ると、母が開けておいた窓から綺麗な日差しが部屋を映していた。今まで自分が廃人生活をしながら全く面倒を見ていなかった部屋は、ゴミ屋敷の状態になっていた。明るい光が生々しい現場を生中継する中、成がベッドから立ち上がった。まだ体は本調子ではないけど、今すぐやりたいことがあった。 「…掃除を…しよう。」 ー「それで、家政夫になろうと思ったの?」
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