第五章

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 要の推理では猪口と大島は手を組んでいた。  あのとき、要は嫌々スマホを大島に預け、大島は台所へ運び、それが全て水につけられ故障した。  大島と猪口がドッキリを仕掛け、極限まで怖がらせるために、電話線を切断し、スマホという連絡手段も断ち、パニックに陥った様をビデオカメラが録画し続ける。    それこそが、荒らしや仮面に相応しいゲスで、卑劣な動画であったはず。でなければ、電話線を切り、スマホを壊した理由が見つからない。  要が荒らしや仮面の動画を見た限り、荒らしや仮面という人物は大変卑怯だが、頭の切れる人物という印象だった。  そんな人間が万が一を考えないわけがない。  もし、放った火が想像以上に燃え広がった場合、救急車を呼ぶ手立てを全て断つような愚かなまねはしないだろう。まあ、実際は燃え広がりすぎて死に至ってしまったわけだが、と要は皮肉混じりにふと笑う。  もしも、大島が死ななければ、猪口を大島が殺害するという計画があったのかも知れない。だとしたら、警察を呼ばれないための時間稼ぎだと言えるが、大島が共犯者である猪口を殺す理由はなんだろうか。そこまで考えたとき、要の頭にあることが浮かんだ。
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