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要が大島の部屋を出ると由希が起きていた。体調はもう大丈夫なようで、要を見かけて由希はにこりと微笑んだ。
要は自分がした推理を披露した。
由希もまた、何を視たのか、大島から何を聞いたのかを全て話した。
「大島さんタイプの幽霊は結構視たことがあるの。自分が死んだことをまだ受け入れていなくて、自分の要求だけを突きつけてくるタイプ。その本人の性格がどうとかじゃなくて、ひとつのことに囚われていたり、思念が強かったり、とにかく話が通じない。でも、こういう霊は数多くいるんだ。実は、まともに話せる幽霊の方が少ないくらい。まあ、話が通じるくらい冷静なら、あの世に行ってるってことなのかも知れないけど」
由希はふと苦笑を漏らす。
「単純な疑問なんだけど、霊同士でお互いを認識してたりするの?」
「認識する者もいるみたい。でも、波長が合わなくて認識せずに同じ空間にいることもあるみたいなんだ。わざと見ないようにしてる霊もいたかな、昔」
「それはどんなだったの?」
「交差点に、嫌な霊がいたの。怨念の深いような、闇の底みたいな。わたし、近づきたくなくて避けて通ったら、漂ってた霊達も避けて通ってた。でも、明らかに避けてる霊もいれば、見えないみたいに通り過ぎた霊もいたから、未練による波長の差があるんじゃないかな? ってわたしは思ってるんだ。後ろ暗い未練がある者同士は見えるけど、家族を心配してこの世に残ってるような温かな霊はそういう者が見えなくて、逆もまたしかり……みたいな。まあ、わたしが勝手に思ってるだけなんだけど」
微苦笑した由希に、要は笑いかけた。
「そんなことないよ。由希には視てきた実績がある。その由希がそう思うなら、それが正しいんだよ」
「ありがとう。要ちゃん」
ほんわかした空気が流れた。にこりと互いに微笑み合うと、由希が切り出した。
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