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ふつか明け、日曜日。
午後1時50分、わたしは音川本町駅の北口についた。改札前には、すでに初瀬さんが待っていた。
「初瀬さん!すみません、お待たせしました」
「いやぼくも来たばっかりなんで大丈夫ですよ。どこか入りますか?」
「はい。じゃあ……そこの喫茶店なんかで」
そう言って、わたしと初瀬さんは並んで歩道を渡った。
窓際の二人席に並んで座る。
すりよってくる店員に、ブレンドコーヒーを二人とも注文した。
しばらく、沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは、初瀬さんだった。
「あの、明日香さん。
お話があるっておっしゃってましたけど……ぼくからも、いいですか?」
意外な彼の出方に、わたしは少しドキリとした。
「……なんでしょう?」
「あの……先週のこと、忘れて頂けますか?」
「……え?」
固まるわたしをよそに、彼は続ける。
「あ、あの、よく考えたら最低ですよね、ぼく!
あんなことがあったのに、しかも、酔いつぶれてらっしゃるところに、あの……告白とか、して。
明日香さんがぼくに興味がないというか、少なくとも恋人だとか、そんな風に見てくれてないことはわかってます。
そんな男に急に言われても迷惑ですよね。
……って、ちょっと、自分が何言ってるか、わかんなくなってきてるんですけど……」
「はぁ……?」
彼も十分パニックだったけど、わたしはそんな彼以上に、言葉の意味が理解できていなかった。
……それはつまり、どういうことなんですか……?
そんなおいてけぼりのわたしをよそに、彼は続ける。
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