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「はい。わたしも大丈夫だって、思います。
その彼、わたしのこと好きだって、数分前、言ってくれたんです」
カチン。
初瀬さんのティーセットが、響くように音をたてた。
さすがの初瀬さんでも、目を丸くしてわたしの顔をじっとみていた。
わたしは唾を飲み、「初瀬さん」と彼の名前を呼ぶ。
初瀬さんは、「はい……」と、珍しく歯切れの悪い返事をした。
よし、勝負を、きめよう。
「初瀬さんがこの前おっしゃった通り、一週間、あなたのことしか考えることができませんでした。
わたしのことを好きとおっしゃってくれて、本当に嬉しかった。
初瀬さん、わたし、あなたのことが好きです」
初瀬さんの気持ちは知っていても、好きな人に好きと伝えるときはどうしても心臓がはねあがる。
初瀬さんはというと、目を丸くしたまま固まっていた。
じっと見つめていると、彼の口がおもむろに動いた。
「……それ、本当に?」
わたしは力強く頷く。
「本当です。
一週間前に失恋してとてもお世話になったのに、図々しいかと思ったのですが……」
こんどは初瀬さんが、首を強くふるばんだった。
「いや……。すごく、嬉しいです……。
あの、調子に乗っていいですか?」
「はい、どうぞ?」
初瀬さんは、わたしの方にからだごとむけた。
「ぼくと、お付き合いしてもらえますか?」
そんな彼の言葉を聞いて、わたしの胸はまたとびあがる。
やっとのことで「はい、お願いします」と返事を絞り出すと、彼ははにかんで、「こちらこそ、おねがいします」とわたしに頭をさげた。
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