つづきは、ナイショで。

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 それから少し、喫茶店で話を続けた。  初瀬さんはどうやら、わたしがバーでハーベイウォールバンガーを頼んだとき、フラれたと勝手に思い込んだらしい。  彼曰く、 「これといったお話もせずに、ただだただバーの名前と同じハーベイウォールバンガーを飲むものだから、ぼくは嫌われて、もうお店には来ないからその記念に……という暗示かと思いまして」 ……だそうだ。  そんなつもりはさらさらなかったのに、初瀬さんの受け取り方はこう言っては難だがとても面白かった。  いつしか日もくれ、わたしたちはイタリアンレストランに移動し、ワインを飲みながらイタリアン料理を頂いた。  いつもカウンターの向こうにいる初瀬さんが、左隣でお酒を飲んでいるのは、とても新鮮な気分になった。  店員さんと初瀬さんはどうやら知り合いのようで、「直樹」なんて呼ばれて、冗談を言い合ってる様子は、バーテンダーじゃない初瀬さんを見たような気がして、なんだかほほえましかった。  ほどよく酔いも回って、一週間前と同じような光景になる。  夜の音川本町駅には、昼間見た野球少年の影はなく、酔いつぶれた若いグループがはしゃいでいたり、おじさんがワンカップ片手に電車を待っていたりしていた。
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