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学園版 バラの姫と星の王子
第一章 「湖での出会い」
王子たちがフクロウとともに学ぶオイレ国。その城の中にあるフリューゲル学園の中庭には8~19歳の少年たちが集まって、木陰で昼寝をしたり花のスケッチをしたりしている。
彼らはみな、将来様々な仕事をしていくために国王のもとで学ぶ学生であり、全員ベージュの制服とズボン、白いネクタイ姿だ。
その中の一人、黒髪と藍色の目を持つ17歳のシュテルンは
教室に残って授業の復習をしていた。父親と同じ端正な顔立ちの
美男で、給仕見習いの女子学生に話しかけられることもある。
「少し外に出てみるか」そうつぶやき、ひなのころから一緒に過ごしている
コミミズクと中庭に移動する。涼しい風が吹いてきて、彼の持っていた羽ペンと肩掛けカバンが湖のほうに飛ばされてしまった。
あわてて取りに行くと、ワインレッドの髪を三つ編みにして水色の制服とスカート、銀のリボンタイを身に着けた女学生を見つけた。どうやら木陰で休憩しているようだ。
「(この国の学生じゃないな。どこの生まれだ?)」と思いながら荷物を置いてそっと近づく。すると彼女が顔を上げてこちらを見た。制服と同じ、水色の瞳が太陽の光できらめいている。
心拍数が上がるのを感じて移動しようとすると、彼女はこちらへやってきた。そうしてシュテルンの隣に座ると、「こんにちは」と声をかけてきた。
「はじめまして。おれはシュテルンです。あなたは?」「わたくしはブルー
メ国から来たローゼです。どうぞよろしく」「こちらこそ」
あいさつが終わると、ローゼはシュテルンに「ここはきれいな場所ですね。
美しい湖や花、そして城がある。わたくしの国と似ています」と少し顔を伏せながら言った。「ここでは王子たちが国王のもとで学んでいます。他国に仕事や外交で行くこともあります。授業は一日8時間あるんですよ」と答えると、
目を丸くして「そんなに!?」と驚いている。
「はい。おれは図書室で自習もしています」と言うと、ローゼは「勉強がお好きなんですね」とさらに驚く。二人は授業開始の鈴が鳴ると、あわてて教室のほうへと戻った。
「わたくしも、あなたと同じ教室で学びます。転入生なので」と言って、
彼女は満面の笑みでノートを開いた。それから授業が終わるまでの間、シュテルンはローゼの聡明さに驚いた。教師が言ったことを、素早くノートに書いていく。とても分かりやすかった。
「あなたの字はとてもきれいで、読みやすいですね」昼食時にシュテルンが
そう言うと、ローゼは「ほめてくださって、うれしいです」と嬉しそうにつぶやいた。
「わたくしはもともと字を書くのが遅く、母国にいたときも母から怒られていました。工夫した結果、前より速く書けるようになったんです」そう言って、彼女はハムサンドを一口かじる。
シュテルンはにっこりと笑って、「ここの三階に学生寮《シュトゥデンテン
ハイム》があります。男子がこの奥、女子は四階です」と白い階段を示した。
シュテルンと同じ部屋で過ごしている金髪の少年・モーントが二人のところにやってきて、「留学生のローゼ様?はじめまして。俺はモーントです。よろしく」とあいさつした。
「彼も王子なんです。8歳の時からずっと、ここでひとりで暮らしているんです。ときどきおばが様子を見にきています」シュテルンは小声で言うと、
「部屋に戻りますね。何かあったら呼んでください」とメモを渡して階段を
上がっていった。
女子寮の自室に行ったローゼは同じ部屋のリーラ・ヴィンターに「今日からよろしく。ローゼ・ブルーメです」と声をかける。リーラは淡い紫色の髪を
とかしながら無言でうなずいた。ローゼはため息をついて自分の荷物をベッドの横に置き、窓をながめた。そしてここでの生活を楽しむことができるように
なればいいと思った。
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