学園版 バラの姫と星の王子

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 第八章 「再び事件発生」  トゥルぺは音を立てないようローゼに近づき、彼女の口に猿轡(さるぐつわ)をかませた。ローゼは目を覚まして驚いていたが、意に介さずもう一枚の布で包むとそのまま抱えて校舎の外にある倉庫に向かう。  鉄でできた柱に妹を縛りつけると、鍵をかけて出ていった。    シュテルンはコミミズクの羽ばたく音で目を覚ました。「どうしたんだ」と 聞くと、黄色い双眸(そうぼう)でじっと見つめられる。何か伝えたい時、いつもこうやるのだ。「お前も感じるのか?おれもだ。ローゼ様が誰かに襲われたって」  翼を広げて飛ぼうとするコミミズクに、「少し待ってくれ。他のフクロウたちから、先生たちに伝えてもらおう」彼は茶色い足輪(異変が起きた時の伝言)とメモをコミミズクにつけ、「すぐに戻ってきてくれ」と言って飛び立たせた。メンフクロウ二羽も一緒だ。  10分後、ヴォルケンら男性教師が彼の部屋に入ってきた。「シュテルン、 どうした」「ローゼ様が倉庫に監禁されています。早く救出しないと」教師たちは驚いたが、「分かった。女子寮の先生にも知らせる。ありがとう」と言ってフクロウたち(サボテン、カラフト、コキンメなど)を飛び立たせた。  ローゼの部屋を見ていた女性教師たちが戻ってきて、「誰かに連れ去られた ようです。シーツが乱れている」と報告した。最年長で灰色の髪と茶色い目を 持つヴィンターが、「学生たちを全員起こして知らせなさい。彼らのことを しっかり見ているように」と指示を出す。教師たちはうなずいて全員を中庭に 集めた。  「ローゼ・ブルーメが何者かに連れ去られ、倉庫に監禁された。私たちは 犯人を捕らえる。それまで部屋から一歩も出るな」ヴォルケンの言葉に、学生たちが驚きの声を上げる。モーントが「犯人はきっと女だ」とつぶやくのが聞こえ、小声で注意する。  ヴィンターが手をあげ、「誰か救出に行ってくれる人はいますか?」と学生たちに聞いた。シュテルンはすぐに手をあげた。モーントとリーラも同じようにしている。  「分かりました。あなたたちとヴォルケン先生に行ってもらいましょう。気をつけて。無事で帰ってきてください」と言って、彼女は四人をじっと見つめた。    
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