学園版 バラの姫と星の王子

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 第九章 「王子の剣技」  ローゼは倉庫の中で冷たい風が吹いてくるのを感じていた。今着ているのは薄手の寝間着だけなので、寒いのだ。姉のおそろしい顔を思い出し、体が震えてくる。  「んんん。ん――っ」彼女の心には悲しみと、ここに置いて行かれるのではないかという気持ちがあったので、空を見た瞬間、驚いた。20羽を超えるカラフトフクロウやワシミミズク、メンフクロウたちの後ろから、教師や生徒たちが走ってくるのが見えたからだ。  そのうちの一羽であるカラフトフクロウの後ろから、シュテルンとモーントが現れた。二人はローゼに気づくと、駆け寄ってきた。  その時、カラスがその前に降りてきた。と同時にコートを着た影が倉庫の前に現れる。彼女の手にはバラが描かれた長剣があった。  シュテルンは短剣を抜いて長剣を受け止める。打ち返すたびに汗を流す彼女の剣と彼のそれがぶつかり、トゥルぺはすさまじい形相(ぎょうそう)で応戦する。  ついに長剣が倉庫の前に落ちると、彼女はその場に座り込んだ。ヴィンターやヴォルケンがその周りを囲む。知らせを受けてやってきた学生たちが、彼女を驚きがこもった目でじっと見つめている。  「なぜこのようなことをしたのですか!」とヴィンターが怒鳴ると、「妹のことが憎くて、早く離れたいと思っていたからです」と答え、唇を震わせながらローゼをにらみつけた。  「あなたに退学を命令します」とヴィンターが言うと、トゥルぺは無言で 門のほうに歩いて行った。  シュテルンはローゼに「ご無事ですか?」と声をかける。彼女がうなずくと、「安心しました」と言って猿轡をはずし、ロープをほどいてくれた。  彼の顔を見た瞬間、涙があふれて止まらなくなった。シュテルンの肩に 止まっているコミミズクが、首をぐるっと回してから翼で彼女のほおに 触れた。黄色い双眸は太陽の光のようで、あたたかい。  「ありがとうございます。助けにきてくださって」とローゼが頭を下げると、「あなたたちは大事な家族なのですから」とヴィンターがほほえむ。それから「ほかの学生や教師たちに、彼女の無事を知らせてください」とヴォルケンに言った。「あなたは部屋に戻りなさい」「はい」  着替えと入浴を終え、ローゼは前日の疲れで翌朝8時まで寝ていた。起きると机の上に新品のドレスが入った箱が置いてあった。  
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