彼とチューベローズに溺れて

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「わぁい! 」 家に帰り、手洗いうがいをさせ、幼稚園の鞄と帽子を決めた場所に置かせ、制服を着替えさせてから一緒におやつを食べる。 そんな風に一息ついてから自転車で公園に出掛ける。 駐輪場に自転車を停めると、ハナは一目散に公園の中へ走り出してしまうが、ある一点を見つめ、足を止めた。 「あ、ママ。あのおじさんまだいるね。」 「そうね」 ……やはりまだ居た。 ハナの言う"おじさん"は、いつも公園に入ってすぐにある大きな花壇の前にあるベンチに座り、何かをするでもなく朝から1日中ずっと公園の直ぐそばの大通りを眺めている男だ。 歳は私より2つか3つ上? いや、同い年か? 座っているからよく解らないが、見た目的に長身で痩せ型。やけに白い……青白い肌をしている。 その男が特に何かをするというわけではないが、やはり今のご時世だ、いつなんどき何が起きるかなんて解らない。 良い歳した男が仕事もせず毎日居たんじゃ気になってしまう……。 そんな私と違い、何も感じない娘は呑気にその男によく手を振る。 男も優しく微笑みながらいつも娘に手を振り返してくれるが、……どうしてもその時に男と目が合ってしまう。 目が合ってしまえば無視するわけにもいかず、とりあえず会釈だけ……。
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