彼とチューベローズに溺れて

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私は何故か男の隣に腰掛けて、暫くの間、いくつか言葉を交わした。 「ママー!お腹空いたー」 「あ、ごめんね。ハナ、そろそろ帰ろっか?」 娘の声で意識が弾かれたようにハッとなり、気が付けばいつの間にか辺りは陽が傾き、うっすら影を落とし出している。 「え! うそ、何時? 」 自分の体感とは全く違う時間経過に驚き、思わず時計を確認すると早17時半を回っている。 「長々と引き止めてしまい、すいません。」 時間を確認していると、男が眉尻を下げ、申し訳なさそうにこちらを見ていた。 「いえ、こちらこそ長々とすいません。 今日は時間も時間なんで失礼します」 立ち上がり、男にお辞儀をしてベンチを後にする。 「ママ、あのおじさんと何お話してたの?」 「ん?色々。」 手を繋いで駐輪場に向かっていると、娘が私を見上げて楽しそうに問いかけてきた。 娘に問われ、思い返してみるが…… あれ?私、何の話してたんだろ? 名前を聞かれて、娘の名前と自分の名前、織田(おだ) 真希(まき)です。と答えたのは覚えている。 「あの、すいません! 」 何故だか良く思い出せなくて、一人で頭を悩ませながら自転車に手をかけていると、見ず知らずのオバサンに声をかけられた。
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