彼とチューベローズに溺れて

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「ママ、さいきんなんだか楽しそう! 」 「そう? 」 彼と初めて対話したあの日から、公園に行けば良く話すようになった。 彼は面倒見がよく、娘の相手も嫌な顔ひとつせず付き合ってくれる。 ──── ────── 一面の桃色が散り、変わりに辺りが新緑に染まり出す。 昼間の気温もポカポカと心地好くなった5月。 連休はせっかくだからと、ちょっとした旅行に出掛けてみたりもした。 「あれ? いつものおじさんが居ないよ? 」 幼稚園に向かう為、公園を通りかかった時に中をチラっと覗きこむと、彼が居なかった。 どうして? 彼にも事情はあるのは解っている、 だけど彼は土日でもいつでもあそこに座っていたのに……。 ────その日は1日中、公園で彼の姿を見なかった。
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