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最終章
大輔は思ったね。
「一体、俺は何をしていたのだ?ここまで大王妃様について来て、これから何をすればいいのだ?教員も辞めてしまった。郷里へ帰っても馬鹿者扱いだ。両親もそらみたことかと言うだろう。一体どうすればいいんだ?」
*
それから十年が経過した。大輔は、ある地方都市で学習塾の英語教師として働いていたんだ。
そして、久しぶりに大阪へ行った時に奇妙な女性と会ったんだ。
大輔がコーヒーを飲んでいた所へ年輩だが、大輔よりも若そうに見える女性が突然話しかけてきたんだ。
「あのー。川村先生じゃありませんか?」
「はい、そうですけど、あなたは誰ですか?」
「昔先生のテストで『思想がなってない』と言って0点をつけられた加藤です。覚えていますか?」
「(---あ、あの時の---)。」
「ああ、加藤さん。よく覚えています。あの頃は僕はウルトラ右翼で君達に変なことばかり教えて御免なさいね。君の試験も調査書では0点になったりしてませんから。それから指導要録には『健全な批判力を持っている』と書いていいように評価しました。本当に御免なさい」
「いえ、いいんです。ところで、先生はまだ教師をやっているのですか?」
「いや、十年前に辞めて今は塾の講師です。本当に嫌な思いをさせて御免なさい。今では僕はネトウヨにも腹を立てるほどの、まあ、どちらかと言うと左翼かなあ。あの時は、ある宗教団体に入っていて完全にイカレテいたんです。君に指導要録なんかで悪いことを書いていたとしたら君は推薦で国立大なんかには受かってないはずですよ」
「いえ、もういいんです。私、今になって先生の言っていたことが正しかったと思えるようになったんです」
「え?どうして?」
「私、今、これに入っています。ご存じでしょうか?」
彼女は鞄の中から一冊の本を取りだしたんだ。
「『天国への道』来岩峰子著」と書いてあったのさ。
了
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