第ニ話

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第ニ話

 体中が痛い。目を開けると、周りは暗闇でほとんど何も見えなかった。ここはどこだと身体を動かそうとした途端、全身に痛みが走り、お凛は昨夜のことを思い出す。 「くっそー」  朦朧としていた意識が、夜の空気の冷たさではっきりと目覚めていく。お凛は昨日、廓から逃げ出そうとしたところを遣手の佐知に捕まり、散々竹の鞭で叩かれた後、そのままこの木に縄で吊り下げられたのだ。  こんなひどい目にあわされるのは、決して今日が初めてではない。今までにも何度もここから逃げ出そうとし、そのたびに捕まり折檻された。それでも懲りずに逃げようとするお凛に、姉女郎達は呆れたように尋ねてくる。 「お前は馬鹿な子だね、あんだけ痛い目にあってもまだ逃げだそうとするなんて。だいたいここから逃げて一体どこへ行こうっていうんだい?」  どこへ行こうなんてことはなにも考えていないなかった。ただ、ここにはいたくないという思いだけが、お凛の心を駆り立てる。
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