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第三十ニ話
(俺の目は節穴だ)
夜見世の準備で忙しなくなっていく遊女達や若い衆の様子に目を配りながら、源一郎は自ら握った掌に力を込める。今日、実際梅に直接かまをかけるまでは半信半疑だったが、梅の反応は、明らかに佐知の勘が正しいことを物語っていた。いや、佐知だけではない。源一郎が今日、本気で梅に探りを入れることにしたのは
『あれは、男を知ってる女の顔だ』
高野屋の言葉を思い出し、源一郎は深くため息をつく。
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