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Ⅳ 未来
――危なかった。
まったく、これだからボンボン育ちは困る。
息子ばかりか父親まで、頭の中がお花畑だなんて。
穏やかな笑みを崩さぬまま、静香は特製チョコレートを奥歯で思いきり噛みしめた。
まあいいわ。一重フェチ問題は、なんとか解決したようだし。
その昔、母が二重まぶたを「作った」のか、それとも実際に成長と共にまぶたが「変わった」のか。そんなことは実のところ知らないし、興味もない。
したがって、場合によっては、いつか自分のまぶたも二重に「なる」のかもしれないが。
とりあえず、恭二にはああ言っておけば、彼が改めて母に確認することはないだろう。
まったく、見た目で一生の伴侶を選ぶだなんて。
なんて頭が悪いのかしら。わかってはいたけれど。
(でも、そのおかげで助かった)
静香はそっと口角を上げる。
そもそもまぶたなんて、年齢を経れば誰でも脂肪が落ちた分くぼんで弛み、二重まぶたと似た状態になるものなのに。
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