18人が本棚に入れています
本棚に追加
Ⅰ 告白
よく晴れた週末の昼下がり。ホテルの最上階にあるフレンチレストランは、今日も着飾った客で賑わっている。
奥の個室では、コース料理のメインの皿が下げられたところだった。当初の緊張もとけ、部屋の中には落ち着いた雰囲気が漂う。
デザートを待ちながら、鈴木恭二は両家の家族をさりげなく見回した。
両側に三席ずつ、ゆったりと配置された長方形のテーブル。向かいの席の静香と、その隣の彼女の両親は、どうやらシェフ自慢の肉料理に満足してくれたようだ。
静香たちにはこちらの地元までわざわざ足を運んでもらうことになったが、実家の行きつけの店を選んで正解だった。支払いは、父がもってくれるというし。
自分の隣の母と、その向こうに座る父は、静香の両親である佐藤夫妻と、それぞれ女親同士・男親同士でテーブルを挟んで談笑している。
着物姿の母越しに見える父の表情が、やや硬いのが気にかかった。長男や長女と年の離れた次男坊の、結婚相手の家族との顔合わせとあって、お坊ちゃん育ちの父もさすがに緊張しているのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!