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Ⅲ 絆
そのとき、恭二のスマートフォンに、メッセージの通知が届いた。
親たちに気づかれないよう、膝に広げたナプキンの下でこっそり通話アプリを開く。
『ごめんね』
『びっくりさせて』
思った通り、相手は静香だった。
『大丈夫』
『こっちこそなんかごめん、親父が』
とりあえず返事を打つ。
すぐに連続で返事が来た。
『ママのあれね、嘘だから』
『二重まぶた、なってないから』
――どういうこと?
静香の返信内容に、恭二は首をかしげる。
『二重にするやつ、恭くん知ってる?』
『ドラッグストアとかで売ってる』
続いたメッセージに、
『あ、わかるかも、俺』
恭二の脳裏に、古い記憶がよみがえった。
中学生の頃だろうか。クラスの女子たちが、そんな話で騒いでいたのは。
せっかくの一重まぶたを、彼女たちはなぜ、わざわざお金と手間をかけてまでして、二重にしようとするのか。朝の教室できゃっきゃと情報交換をする女子たちの声を聞きながら、心底残念だったから、よく覚えている。しかもそのアイテム名が、「〇イプチ」とか「〇たえのり」とか、すごくインパクトのあるやつで。
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