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いずれにせよ、あと数年なら、彼が大好きなこの目元も維持できることだろう。
その間にさっさと子どもを産んで、跡継ぎさえ確保すれば、その後はもう、細かいことなんかどうだっていい。
恭二だって、いい年になってしまえば、息抜きに多少羽目を外すことはあっても、妻の顔が気に入らないから子どもと財産を捨てて離婚するなんてことは言いださないだろう。そう、父のように。
静香は、自分にそっくりの容姿を持つ父に目をやった。
女性全般が大好きで、けれどそれよりもっと妻の資産が好きな父は、今はしきりと恭二の母に話しかけている。
まったく、いつもながら見境のない。けれどまあ、それだけのことなら問題もない。
――そう。些細な点なら、いくらでも目をつぶる。
目を伏せて、静香はコーヒーに口をつけた。一つずつ手作業で作られるチョコレートとの、素晴らしいマリアージュ。
(――譲れる部分なら、選ばせてあげる。いくらでも)
結婚は、恋や情熱なんかでするものじゃない。一族の繁栄のための、重要な事業なのだから。
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