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目の前では恭二が、砂糖を入れたコーヒーをスプーンで混ぜている。ふとした仕草に滲み出る彼の育ちの良さに、静香は苦笑した。
金払いのいい裕福な家の、気のいい次男坊。しかも実家同士は近すぎず遠すぎず。
健康で多少は損得勘定もできて、頭の切れこそないけれどそれなりの学歴はある二十代。
いいえ、むしろ切れなどないところがいい。私の会社の経営に余計な口を挟むような夫など、いらないのだから。
……たしかに、後継者について、口約束はしたけれど。
時期が来れば、彼も周囲もいやというほどわかるはず。彼と私の二人の内、社長の座にふさわしいのは、いったいどちらかということが。
そしてそのとき、幼い頃から贅沢の味を知っていて、損得勘定もできる彼なら。立場をわきまえてくれるはずだ、きっと。
(――こんな良い物件、絶対に逃がしたりしないわ。私の選んだだんな様)
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