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静香と視線を合わせながら、恭二は今日も、自分の顔がふにゃふにゃと緩んでいくのを感じた。
いまだに、とは自分でも思うが。
静香とつき合うようになって三年たった今も、この笑顔を見るたびに、恭二はどろどろのぐずぐずに溶けてしまうのだ。
文字通り、一目ぼれだった。
遊び慣れた同級生たちには地味な女と評されたものの、包み込まれるような静香の切れ長の瞳に、初めて会ったときから、恭二はどうしようもなく心を奪われた。
そしてゼミが始まってみると、普段はおっとりした癒し系の彼女は、研究では他の誰よりもシャープな洞察力を発揮した。そのギャップもまた、末っ子気質の恭二のツボで。
(あいつらは、まるでわかっちゃいない)
恭二は頭の中で、女子アナやアイドルにうつつをぬかす友人たちの顔に大きくバツをつける。
(一重まぶたは、地味じゃない。
“ミステリアス”“慈愛と母性”“クールビューティー”……そんな言葉をいくら重ねても到底伝えきれない、無限の引力を秘めた、魔性のアイテムなんだ!)
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