18人が本棚に入れています
本棚に追加
静香の母に話を振られて、恭二の母もにこやかに調子を合わせる。
「ええええ、本当に。おっしゃる通りだと思いますわ。このたびは、昔のこととはいえ、主人がご迷惑おかけしましたそうで」
隣で、恭二の父が力なく笑った。
そういえば、父の好みをわかりやすく反映したのか、恭二の母は奥二重のあっさりした顔立ちだ。
「いえいえそんな、奥様。どうぞお気遣いなく」
静香の母が大げさに手を振る。
「もう、ママったら」
「ははは。しかし君にはいつも驚かされるなあ。もしも静香が君に似ていたら、びっくり箱がふたつで、僕はきっと気が休まる暇がなかったよ」
たしなめる静香と、あくまでも朗らかなその父。
ふわふわと続けられる会話に、笑顔で適当に合わせつつ、恭二は内心、衝撃に打ちのめされていた。
(――嘘だろ?!)
問題は、静香の母の話の内容だ。
(二重まぶたは優性遺伝だと? 今は一重でも、ゆくゆくは二重まぶたになる?)
生物に限らず理数系全般に弱くて、遺伝の話はよくわからないけれど。
恭二は、親たちに何か言って笑っている静香の横顔を盗み見る。
最初のコメントを投稿しよう!