希う

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私は普通の人間だ。 クラスで特別浮いているわけでもなければ、かといって中心的人物でもない。良くも悪くも目立たない存在だった。 ひとつだけ、他の人と違うのは中学生にもなっておまじないの類が好きだということ。 物事を決めるときは決まってタロットかOリングテスト。その他にも可愛いものだと消しゴムに好きな人の名前を書いたり…。 そして今日は少し踏み込んだおまじないをした。 好きな人の机に黒い百合を置き、呪文を唱えると、その人と両想いになれる。 とあるネット掲示板で見つけたそれは、掲示板の住人達からものすごい反響を受けていた。 「本当に恋が叶った!」 「これはマジ」 「すごい!ありがとう」 などなど…。 そんなもの見たら、試さずには居られない! 私はすぐに百合の花を買ってきた。本当は天然の黒百合が良いらしいけど、残念ながら花屋にはなかった。だが別にそれでもいいらしい。効力は落ちるけど…。 私は絵の具で綺麗な白百合を黒く染め上げた。美しい花を汚すのは罪悪感があったけど、なんとか塗り終えた。 そして、それは今祐介くんの机の上にある。 私は他の人に怪しまれないように、百合を置いてからずっとトイレに篭っていた。 他の生徒達が登校してきたようで、だんだんと校内に人の声が増えてきた。 そろそろ戻ろうか…そんなことを考え、個室の戸を開ける。 そこには、祐介くんが立っていた。 「え?」 驚きのあまり硬直する私。そんな私を気にすることもなく、祐介くんは笑顔で言った。 「彩子ちゃん、君のことが好きだ!」
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