足りないもの

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 「俺に足りなかったのは、誰かを想う気持ち。そして感謝する心か。」  がらがらとドアが開く。晴己が目を覚ましたと聞いて、すぐさま駆けつけてくれたのは町田社長だった。  「晴己。大丈夫か。本当に心配した。まだ痛むか。動けるのか。」 町田社長は、晴己が返答する間を空けずして、質問する。 「社長、本当にすみません。来てくださってありがとうございます。 それより社長、俺気付いたんです。俺に足りないもの。」 「晴己、お前そんなことはいまは気に・・・」 町田社長の声を遮るように晴己は続けた。 「俺は今まで本当にたくさんの人たちから、愛をもらってきました。 夢を応援し続けてくれる両親。切磋琢磨しながらアイドルとしてデビューすることを目標に励まし合って一緒に練習してきた仲間たち。僕を愛し、デビューを待ってくれているファンのみんな。そして、僕のことを想って、見守りながら時には試練を与えてくれる町田社長。」 「晴己・・・。」 「子どものころから当たり前にたくさんの愛をもらって生きてきた。そして今まで自分のことばかりかわいくて、自分のことばかり考えて過ごして来たんです。でも、俺今回の事故でみんなからたくさん心配してもらって、たくさんあったかいメッセージもらって。俺このたくさんの愛に感謝して、ありがとうって思いをみんなに伝えたい。またステージに立って、今度は俺がみんなに愛を返していきたいです。」 町田社長は、大きく何度もうなずいた。 「晴己。早く復帰しろ。みんな待ってる。仲間も、ファンも、わたしもね。」 町田社長はそれだけ言うと、普段はなかなか見せない笑顔を晴己に向けて晴己の肩をポンと手を置いて、病室を出ていった。
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