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はじまり
東京ドーム。きらきら光る無数のペンライト。俺の名前が大きく書かれたうちわ。そして会場全体に響き渡る歓声と名前を叫ぶファンたちの声。強すぎると感じるほどの証明が俺を照らす。あー、なんて幸せなんだ。俺が見たかったのは、この景色だ。俺が聞きたかったのは、この声だ。目の前のその輝かしくきらびやかで眩しい世界に目が潤む。
これは、夢じゃない。現実だ。
「ありがとう」
晴己は客席に向かって何度も何度も叫ぶ。
関係者席には、両親の姿。
母だけではない、父まで涙を流していた。
こんなにも、こんなにも、他人とお互いに想いあえることが幸せなのか。
ファンひとりひとりの顔をみる。
笑顔のファン、泣いているファン、叫ぶファン。
そして町田社長も見に来てくれている。
___俺をたくさん悩ませて、困難を与えた存在。
___俺を伸ばしてしてくれる存在。
___俺を見守ってくれる存在。
__俺が最も感謝している存在。
__俺の輝いている姿を一番に見ていてほしい存在。
「これから俺はここにいるみんなを絶対に幸せにします。
長い間デビューを待っていてくれたみなさん、本当にありがとうございます。
俺のことをなかなかデビューさせてくれなかった町田社長、これからの俺のリベンジしっかり見ていてください。」
ステージから叫ぶ。客席の両親も、ファンのみんなも、グループを結成した仲間たちも、そして町田社長も、みんな笑顔だ。なんて眩しいんだろう。
晴己の夢は始まったばかりだ。
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