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 東京ドーム。きらきら光る無数のペンライト。俺の名前が大きく書かれたうちわ。そして会場全体に響き渡る歓声と名前を叫ぶファンたちの声。強すぎると感じるほどの証明が俺を照らす。あー、なんて幸せなんだ。俺が見たかったのは、この景色だ。俺が聞きたかったのは、この声だ。目の前のその輝かしくきらびやかで眩しい世界に目が潤む。  そこで、目が覚める。あー、またこの夢だ。  22歳の福島晴己(ふくしまはるき)は、ベッドで目をこすり、あたりを見渡して現実を再確認する。ここはいつもの部屋で今日もいつもと変わらない朝がきたのだ。せまい1K。さきほどまで見ていた幸せな夢から一転、むなしい現実にため息が漏れる。最近は、この夢をやたらと見る。  時刻は7時15分。さあ、起きて今日もレッスンの準備をしなければ。    
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