実際に韓国人はどう感じているか?

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実際に韓国人はどう感じているか?

(七)韓国人は実際にどう感じているか  実際、韓国へ行ってみると一九〇〇年代には禁止されていた日本の漫画がいたる所で売られていた。そしてこれは大変な人気である。また、和食のレストランなんかはあまり見なかったが、日本のアニメや映画も解禁されていて大変な人気だ。政府は反日であるが、一般庶民にまで反日が浸透しているとはとても思えなかった。  私は外国へ行くと、様々な質問をぶつけることがよくある。例えばソ連崩壊直後のロシアへ行った時なんかも「ソ連時代と今とどちらが良かったか?」と聞いて回った。すると老人は大抵がソ連は良かったと言うのに対して若者の大半は今の方がいいと答えていた。韓国でも「日本は好きか」と聞いて回った。驚くべきことに大半の韓国人は「好き」と答えた。特に日本のアニメなどの「おたく文化」に興味があるらしい。「独島(竹島)はどこのものだと思うか」に関しては大半が「韓国領」と言っていた。教育のせいだろう。  また、驚いたことに従軍慰安婦なんかのことについては韓国人は「日本が悪い」と思っているようだが、徴用工などについては「彼らは本国の二倍の給料がもらえる問い言って募集に応じたのだから仕方がないのじゃないか」という意見も聞くことができた。そしてレーダー照射問題については以外と「知らない」という答が多かった。  韓国人は我々が感じているほどは反日ではなかったというのが、私が十四回韓国を実際に訪れた感想である。   (七)格差社会と嫌韓。  現在、世界中の先進国が格差社会に突入している。BRICSの台頭で成長の見込めなくなった先進国では、パイを増やすことができず、全ての富の大多数を少数の金持ちが独占するという傾向が見られるようになってきた。これはアメリカが特にひどく、数%の金持ちが富を独占し、残りの庶民の大半は貧困ラインか、そのぎりぎりの生活を送らざるを得なくなっていると言う。(アメリカにも行ったことがあるが、そんなに酷いとは思わなかったが)そんな中で、アメリカ人は社会民主主義や社会保障を手厚くする道を選んだのではなく、ドナルド=トランプを選んだ。オバマケアも廃止され、オバマ前大統領にナチスのハーケンクロイツを描いたデモまで出現した。アメリカ人には全てのことは自分の責任という「新自由主義」の考えが合っているようである。北欧型の福祉国家なんかは「ファシズム」か「社会主義」と映ってしまうのだろう。だから威勢の良いことを言うトランプが人気を得た。  一方、日本では一割の金持ちが富を独占していると言わている。しかし、日本でも小泉政権の時代から「規制緩和」という名の「新自由主義」旋風が巻き起こった。郵政を民営化し、政府を小さくして、政府は経済活動には口を出さないという古典派経済学のような理論がまかり通るようになってきた。その行き着く先が格差社会である。そして、ファシストがそうであったように、国民の不満を常に外へ向けているのではなかろうか。中国・韓国・北朝鮮叩きである。勿論、北朝鮮の核には私も反対であるし、正直言って怖い。しかし、北朝鮮がミサイルを発射するたびに安倍首相の支持率が上がるという現象はいかがなものか?また、軍事的にはアメリカと同盟を組んでいる同じ「西側」にいる韓国を叩くのはどうしてだろうか?  これは格差社会の中で閉塞した状況を打ち破るために攻撃の矛先が「在日」や、妄想でしかない「在日特権」に及んだものだと考えるということは先述した。在日が特権を必要以上に振りかざし、日本人の「生存権」まで奪っているというのだ。この「在日特権」には全く妄想としか思えないようなことまでネットで流布されている。  例えば、「在日は税が免除されている。」とか、「在日は光熱費を免除されている」とか、「生活保護の八割は在日である。」とか言ったものである。これらは全くの嘘・でたらめであって、例えば生活保護の九八%は日本人が受け取っている。  しかし、彼らの怒りの矛先は韓国や在日韓国人へ向かう。その極めつけがヘイト・スピーチだ。  ヘイト・スピーチの連中はネットで仲間を集め、韓国・朝鮮人を口汚く罵りながら大阪の鶴橋や東京の新大久保などを練り歩く。見ている在日の人達には何と映るだろうか?  拡声器から音が聞こえる。「ゴキブリチョン公は朝鮮へ帰れ。」「文句のあるチョン公は出てこい。」「朝鮮人をガス室に送れ。」「良い朝鮮人も悪い朝鮮人も帰れ。」 そして、徒党を組んでスピーチを行った彼らの得るものは連帯感・達成感・仲間意識である。こんな形でなければ、またネットがなければ仲間も作れないのだ。 大体、彼らは現実に韓国・朝鮮人、あるいは在日韓国・朝鮮人と接したことがあるのか?あるならばこんなことはできようはずがない。  彼らがよく口にするのは「韓国が慰安婦像を建てたり、李明博が竹島へ上陸したり、日本文化をパクったり、彼らのやっていることの方がヘイト・スピーチだ。」と言うことである。しかし、韓国が慰安婦像を建てたからと言って、それが日本人を傷つけているのだろうか?竹島を占拠されたぐらいで誰が困るのか?日本文化をパクったと言っても、剣道も空手も合気道も茶道も華道も桜もみんな日本が源流であることくらい外国人はみんな知っている。それが誰かに迷惑をかけたとでも言うのだろうか?  「パクリ」について言えば、テコンドーが空手のパクリだという説がある。しかし、テコンドーと空手は明らかに違ったものになっている。例えパクリであったとしても、東京オリンピックで空手も正式種目になったからいいではないか。私は空手の有段者である。だから、ソウルオリンピックでテコンドーが正式種目になった時は「空手はどうなるのだろうか?」と思ったこともあった。しかし世界的に見ると両者は明らかに共存している。だから今は何とも思っていない。  とにかく、韓国が国単位でヘイト・スピーチをやっていると言っても、それが個人にまで影響を及ぼすことではない。少なくとも私は何の被害も被ってはいない。  しかし、日本で行われているヘイト・スピーチには明らかに「被害者」が存在する。鶴橋や新大久保の、否、日本全国に五八万人いる在日韓国・朝鮮人である。マイノリティーである。日本人は一億人以上いる。彼らはせいぜい六〇万だ。これは「弱い者いじめ」ではないのか?  「日の丸が泣いている。もう一度言おう。日の丸が泣いている。」  本当の右翼は弱い者いじめなんかしない。彼らは右翼でもなければ愛国者ですらない。かつて、二・二六事件の時の青年将校達は東北出身者が多く、東北で飢饉が起こっても何もしない政府の無策に憤って決起した。現在、日本は政府の無策のために三万人もの人々が自殺し、正社員になって過労死するか何の保障もない派遣やフリーターの労働者になるかしか生きる道がなくなっている。この政治に対して憤るのが本当の右翼であり、愛国者だ。格差社会を生み出して放置してきた政治の貧困に対して憤るのが真の愛国者だ。 ヘイト・スピーチは幻想にしか過ぎない「在日特権」に対するルサンチマンが生み出したものである。確かに、今まで在日コリアンに対して批判しようものなら「差別者」のレッテルを貼られ、何も言い出せない状況にあったことは事実である。何も彼らの肩を持つわけではないが、彼らはこれらのタブーを打ち破ってきた。例えば、彼らは水平社博物館前や日教組徳島支部なんかへも押しかけている。  しかし、だからと言って彼らの行動が容認されるわけではない。否、非難されるべきものなのだ。  実際に在日コリアンを差別している連中は、在日コリアンとの接点をもったことのない人が多い。彼らは自分達と違ったものに対して恐怖の念を抱いているに過ぎない。  私は三一年間教師をやっていたので在日コリアンの生徒を何人も受け持ったことがある。また、一四回も韓国へ行っているので、現実に韓国人と接してきている。  そして、彼らに対する私の感覚は、「良い在日コリアンもいれば嫌な在日コリアンもいるし、良い韓国人もいれば嫌な韓国人もいる。」というものである。日本人にも「良い日本人もいれば嫌な日本人もいる。」と言うのと何ら変わりはない。  また、韓国へ行って「反日」に全く遭遇しなかったかと言えば、「今から考えたらあれは『反日』かな?」と思えるようなこともあった。  例えば、私がタバコ屋へ入って韓国のタバコである「エイティーエイト」を買おうと思って「パルパル(エイティーエイトの俗称)イッスムニッカ?」と言った途端に、店のおばさんが「タンシニィ・ハングンマル・モルゲソヨ!(あなたの韓国語はわからない)」と言われて店から追い出されたことがある。  しかし、それは日本人だと思ってそうしたのか、本当に私の韓国語が分からなかったのかは定かではない。  それから、妻を連れて食堂へ入ったところ、「チョッパ・モッケスムニッカ?(チョッパを食べますか)」と言われて、豚足が出てきたことがある。豚の足、すなわち「チョッパリ(日本人の蔑称)」である。  しかし、ゲテモノや食えないものを出したのなら向こうが明らかに悪いが、豚足は大変美味であった。これも日本人を馬鹿にしているのか否かは不明である。  こんなことを問題にするなら、私はフィリピンやタイやロシアでもっとひどいことを言われたり、されたり、またボッタクリにも遭っている。  韓国はネットやニュースで流されるほどは「反日」ではない。  ヘイト・スピーチの問題は少数者へのいじめであることだ。我々日本人は意識していないかも知れないが、実際に大阪の鶴橋や東京の新大久保の在日コリアンはどう思っているのだろうか?  とにかく、日本人は異形の者、例えばLGBTや精神障害者、黒人などについて忌避感を持つ者が多い。そして、このような人達がかつてナチスによってガス室に送られた。  かつてナチスがユダヤ人に対して抱いていた忌避感は、ネトウヨの諸君が在日コリアンに抱いているものと同質のものであると言ったら言い過ぎだろうか?事実、ヒトラーはユダヤ人を多く知っていたわけではない。それから、ユダヤ人にもロスチャイルドのような大金持ちもいれば、屋根の上のバイオリン弾きのような人もいるのだ。すなわち、「いい人もいれば嫌な人もいる」のである。  このような現象が現在の日本で起こっているとするならば、これは明らかに国際問題になる。事実、国連はヘイト・スピーチを規制する法律を整備するように日本に迫っている。  また、ドイツにもフランスにも、このようなデモを禁止する法律が存在する。  日本が「道義上も立ち遅れた国」にならないように、日本は古来から「言霊」を信仰してきた国であることを誇れるような国になりたいものである。  (八)韓国の軍人さんと大学教授。  私はキリスト教会で韓国軍の元陸軍大領という方と知り合いになった。また、ロシアで一人の韓国人の歴史学者と、日本の教会で韓国の外国語大学の教授と知り合いになった。  先ずは韓国軍の陸軍大領(多分大佐のことだと思う)だったという方から話を始めよう。この方は齢九十歳だというのに背筋はピンと伸び、声量もあり、さすがは元軍人という感じの方だった。キリスト教徒であり、韓国のヨイド純福音教会で知り合った。日本語に堪能で、我々日本人と何も変わりはなく、自分から名乗らなければ日本人として通っているであろう。  私がヨイド純福音教会へ出かけ、外国人専用席に腰掛けていると、いきなり日本語で話しかけてきた。  「日本人ですか?」  「はい」  「私はこういう者です」  と言って名刺を刺し渡した。確かに「韓国陸軍元陸軍大領」と書いてあった。  余程日本人と話がしたかったのであろう。礼拝が終わって「日本宣教会」を案内されて一緒に別棟の建物の中へ入っていった。そして「日本人一千万人救霊」のために祈った後、現在の韓国の対北戦略のことや六二五(朝鮮戦争)の体験などを熱く語った。日本とアメリカに対しては悪感情は抱いていないようであった。特に六二五では北がいかに非人道的であったかなどを話した。そして、その後もこの教会を訪れるたびにこの方とお会いした。  韓国軍は自衛隊と米軍とは友好関係にある。だから日本が好きだと言っていた。  そして妻を連れて教会を訪れた時に食事に家まで誘われた。ソウル市内にあるマンションであり、かなりの広さを持ったマンションであった。6LDKだと言っていた。東京ならば億単位のマンションであるが、「これは韓国の典型的な中産階級の家です」と言っていた。  応接間には既に食事の用意がされていた。伝統的な韓国料理が並んでいた。妻と私はその料理に舌鼓を打ちながら大領の話を聞いた。  「日本では嫌韓の人が多く、韓国は反日国家だと思っている人が多いと聞き及んでますが、日本を本当に嫌っているのは韓国人の三分の一です。残りの三分の二の人達は日本のことが大好きです。勿論、私は韓国で教育を受けましたが、小学校の低学年の頃は日本人の先生から教えを受けました。とてもいい人でした。また、ハングルや学校教育を整備してくれたのも日本です。感情的に日本を嫌っている人も確かに多くいますが、かといってそれが韓国人の本音だとは思わないで下さい」と言っていたのが印象的だった。  そして話もたけなわの頃に、その元陸軍大領は出し抜けに言った。  「ところで、明日私の車で板門店へ行きませんか?」  私は「板門店」と聞いて次の言葉に窮してしまった。なぜそんな怖ろしい所へ連れて行こうとするのだろうか?この人は何を言いたいのだろうか?分断された国家の軍人の、平和な日本に対する妬みか?  私は妻に尋ねた。こんな所へ連れて行くには当然妻の同意が必要だったからだ。  「板門店へ行こうと言うてるんやけど、行く?」  妻は怪訝な顔をして言った。  「『パンムンジョム』って何?」妻は板門店を知らなかったのだ。そこで私は子供に噛んで含めるように妻に説明した。  「あのね、韓国というのはね、今パクさんが話したように分断国家なの。同じ民族が北緯三十八度線で韓国と北朝鮮に別れて対立しているの。その韓国と北朝鮮との国境にあるのが板門店や。そこへ行くと銃を持った兵隊がいてお互いに北と南を見張っているの。だからそこへ行くと下手をすりゃあ鉄砲で撃たれるかもわからないの。だから行く時には『銃で撃たれて殺されても文句は言いません』という用紙にサインしてから行くの。分かった?」  急に妻の顔が曇り、玩具を突然ぶち壊された子供のように不機嫌になり、陸軍大領には丸聞こえであるにも関わらず、小声で言った。  「私、そんな怖い所、行きたくない」まるで駄々をこねている子供のようだ。  「じゃあ、どこへ行くの?こんな所滅多に行けないよ」と妻をいさめた。  「私、ロッテワールドを楽しみにしていたからそこへ行きたい」まるで本当の子供だ。そこで大領は言った。  「奥さんがそうおっしゃっているんだから、またご主人が一人の時にしましょうか」  こうして楽しみにしていた板門店はお流れになった。大領はあまり気にしてない素振りを見せようと気を使っているように思えた。  また、世界中の至る所で韓国人に出会うようになってきた。韓国人の旅行者も増え、日本に関して言えば、来日する観光客の一位は中国で二位は韓国である。  そしてモスクワで韓国人の歴史学者に出会った。モスクワ大学歴史学教授という肩書きであった。かなり偏った歴史観をもっているのではないかと思ったが、そうではなかった。歴史には客観性が大切であり、韓国も日本も感情的になって客観的に歴史を見られていないという意味のことを言っていた。やり取りが英語だったので、何を話したか、詳しいことは覚えていない。しかし、韓国人全てが間違った歴史観を持っているわけではないことが窺い知れた。  さらに、私の属している教会に韓国の外国語大学の教授である金氏がやってきた。私はその方とは教会への送迎の車で一緒になった。  「○○外国語大学の教授の金さんです」と、運転していた牧師が言ったので、韓国語で挨拶をした。すると、金氏は「上手な韓国語ですね。どこで勉強したのですか?」と流暢な日本語で尋ねてきたので、「独学です」という本当のことは言わずに「チョヌン、テハッキョテエ、チェーイーウェグクオヌンハングンマルイムニダ(私は大学時代、第二外国語が韓国語でした)」と答えると、「じゃあ、大阪外語大学か天理大学ですね」と返ってきた。日本の事情には詳しいようであった。そこで、「いや、実は独学です」と正直に答えたら、驚いたような目をしてこちらを一瞥すると、そんなことに構わずに次の質問が飛んできた。  「独島はどこの国のものと思いますか?」実はこの教授は竹島の研究では有名で、日本ではしょっちゅうネットで叩かれている方だった。私は正直に「興味ありません」と言うと怪訝な顔をこちらに向けた。  竹島の研究家というと、必ず反日だと思ってしまいそうだが、実際はそうではない人もいることを初めて知った。この教授は弟さんも日本の大学を卒業しており、兄弟そろって親日家であるらしい。  「韓国人だから反日」だと思ってしまうのは日本人の偏見である。
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