序章

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「話すと言っても、皆捕らわれの身。情報がないのでは?」 無愛想な茶敷さんは淡々と言った。 冷たいけれど、言い分は最もだ。見える範囲は赤条さんが調べ尽くし、ここにいる人の持つ情報は同じなのだろう。…いや。この部屋で気になる事が一つある。 「橙野さんの持っている本はここにあった物ですか?」 そう。唯一手ぶらじゃない橙野さんの本だ。 誰も茶敷さんに反論出来ずまたもや沈黙となった、その静寂を破って疑問を投げかけた。 「こ、これは…」 「くだらない自己紹介は終わりましたでしょうか?」 全員が突如作動したモニターに顔を向ける。 映し出されていたのは一人の女の子。白い服にこれまた白い髪。瞳までもが薄い色素で、その全体の色合いから儚げな雰囲気が漂ってくる。 思わず見とれてしまったが、無機質で威圧的な言い方。私たちを誘拐し、監禁した張本人が姿を現した。 私と年が変わらなそうで、なんならここに居る誰よりも軟弱そうなこの子が、こんな大人数を攫った?しかも成人男性の青門さんや赤条さんをも? 全員同じことを考えていたのか、息を飲めど、声を発する者はいなかった。 しかしこの静寂を待っていたかのように彼女の後ろから影が伸びてきた。 …誘拐犯は二人? 白い肌に細いシルエットは瓜二つ。だけど対照的に髪や瞳、服装までもが真っ黒な少女がモニターを占拠し、荒々しく言い放った言葉に私は頭が真っ白になった。 「ワタシはシロエ。」 「そしてワタシがクロエ。これからゲームを始める。一度しか言わない。ちゃんと覚えろよ。」
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