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第一のゲーム:お茶会
前触れのない暗闇で咄嗟に声を出す人もいたが、十秒もしない内に明るさが戻った。
以前としてモニターは消えたままで、テーブルに何か置かれている訳でも、誰かに異変がある訳でもなかった。一体今の暗転は…。
「これより、お茶会の準備を致します。」
知らない声に全員が後ろを振り返った。
大扉の前にはさっきまで居なかった男性が立っていた。タキシードを着て、凛とした佇まい。フィクションの執事を彷彿とさせる。一つ異質なのは着けている狐のお面。笑っているようにも見える装飾は、不気味ささえ覚える。
「あ、貴方何処から…!」
「電気が消えた数十秒の間は、俺らの声だけで物音なんてしなかったけど?」
黄久瀬さんと赤条さんが問いただす。
確かに扉が開く音も、足音さえしなかったのに…。
「皆様には自室で正装に着替えて頂き、三十分後、この広間にお集まりをお願い致します。」
全く聞く耳を持たないところがあの犯人二人にそっくりだ…いや、犯罪者が人質の意見を聞く必要がないとでも言いたいのだろうか。
手のひらで踊らされるのは嫌だけど、脱出の糸口がない今は言う通りにする他ない。
他の皆もそう思ったのか、無言で広間を後にした。
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