孤高のアルフィスタ

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 今から24年前だから1996年、僕は小さな金型制作会社に転職した。  通勤には当時の愛車であった1978年型アルファロメオアルフェッタGTという超マニアックな車を使用していた。  なけなしの金を叩いて頭金としローンを組んで17年落ちの中古を何もレストアせずに買った物で、買った時からエンジンのオイルが漏れていた。のみならず70年代のイタ車のボディは雨にとても弱く錆びやすいので僕のフェッタ(アルフェッタの愛称)も雨が多く湿気が多い日本の気候には適さず錆が所々に浮いていた。  何故、そんな故障しそうなぼろい車をローンまで組んで無理して買ったかと言うと、僕は子供の頃、スーパーカーブームの影響をもろに受けヨーロッパの名門メーカーのスポーツカーに憧れるようになりアルファロメオもその一つで、フェッタはスーパーカーブームがあった70年代に生まれたスポーツタイプのクーペで、そのスタイリングはスーパーカーのデザインも担当した名デザイナーのジウジアーロの手になる物で而もアルファ伝統の4気筒ツインカムエンジンはアルファミュージックと呼ばれる素晴らしいサウンドを奏で、ハンドリングもトランスアクスルと言って嘗てのF1マシンのメカニズムを踏襲して前後重量配分を50対50になるように変速機とクラッチをエンジンから切り離して後輪デファレンシャルの直前に配置したのが功を奏してオンザレール感覚を味わえ、車好きには堪えられない仕様となっていたからだ。  が、僕のフェッタは余程のエンスージアストな車好きでないと良さが理解できず食指が動かず上滑りな俗物の観点から見て只のポンコツにしか見えないような代物だったから前の会社でも興味本位でフェッタを見て馬鹿にする人はいても良い意味でフェッタに興味を持ってくれる人はいなかった。
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