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ロゼッタの焚き火。
Ⅲ
セシルがいるこのヨーロッパという国の冬は恐ろしく寒い。それは毎朝霜が下りてくるほどだ。
本来ならば、庭にはエヴァーグリーンやグラス。それに寒さに強い宿根草といった多年草が植えられている――はずだった。
今は亡きセシルの母クリスティーヌは植物が大好きだった。彼女が生きていた頃は春夏秋冬様々な草花が咲き乱れ、よく季節の変化を楽しんだものだ。しかし、今のハーキュリーズ家には庭の維持費がない。だから枯れ果てた落葉低木しか存在しなかった。殺風景なこの庭にも、やはり以前の面影はすっかり消え去っている。
セシルは悲しくなる気持ちを抑え、玄関ホールを抜けて庭に降り立った。
すると自分の気持ちを代弁しているかのような冷たく悲しい木枯らしが吹き付けてくる。見上げれば、鱗雲が広がる空は青く、ずっと高い。
あの雲の彼方に両親がいるのだろうか。
セシルの胸に哀愁が漂う。
気持ちを切り替えるために深呼吸をすれば、何やら焦げ臭い匂いが漂っているのに気が付いた。途端に胸の奥がもやもやしはじめる。先程胸に過ぎった嫌な予感が再びセシルを襲った。
慌てて焦げ臭い匂いの元へと向かえば、そこには義姉のロゼッタが何かを燃やしているではないか。セシルは彼女が手にしている持ち物に、はっとした。
だって彼女が持っているそれはたった今も自分のポケットの中にある手紙の封蝋の印とまったく同じものなのだ。
「っ、ロゼッタ、何をっ!!」
セシルが震える声でロゼッタに尋ねると、彼女は意地悪そうに、ふんっと鼻を鳴らした。
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