危機一髪……!!!

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 言い訳をするわけではないが、昨日の夜には確かに目覚ましをかけたのだ。だが、朝起きてみると枕元にめざましはなく、部屋の時計は7時半をさしていた。  7時半?遅刻ギリギリの時間である。一気に目が覚めた。  いつもならもっと前に声をかけてくれるはずの母さんは、今日に限って早く出勤。あいにく家にいなかった。  そもそも、目覚ましはどこに消えてしまったのか。  答えは家の飼い猫、茶々だった。ホシはアキが寝ている間に部屋に侵入、そのままブツを持って逃走したようだ。純白に少し茶色の混じった、綺麗な毛並みを見せびらかしながら時計で遊んでいるのを今朝発見した。  そんな偶然の不幸が重なって寝坊した俺は、パンをトースターに突っ込み、その間に急いで身支度を済ませた。  今日は最低限歯磨きと顔を洗うだけにして着替える。あとは昨日準備しておいたランドセルを背負って、さっきのトーストを持つだけ。これだけではお腹が減ってしまうが仕方ない。  だが、母さんがそのままにしていた食器だけは片付けて家を出た。帰ってきたときに、汚れのこべりついた食器を見るのはどうしても嫌だったのだ。  ……我ながら主婦のような考え方だと思う。
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