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俺は、涼しい顔をしているであろう夏乃の背中を追いかける。腰までのばされた艶のある黒髪が、風に乗ってふわりとなびいている。
ベタな関係だが、夏乃は同い年でお隣さんということで、物心つく前からの幼馴染みだ。
幼い頃は人間とは思えないほど可愛らしかったが、今や雪女だ。時の流れとは残酷なものだ。
その雪女……じゃなかった、夏乃が足を止めた。待ってくれる気になったのかもしれない。足を早める。
立ち止まった夏乃は、どうやら何かを拾ったようだった。俺のため……ということは残念ながらなさそうだ。分かっていたさ。
「なんだ?それ」
追いついて立ち止まり、夏乃の手元を覗き込む。
持っていたのは、ゆるキャラのような柄が印刷されたシュシュと、似たようなイラストが入ったトレーディングカードだった。
丸っこくて二頭身で、いかにもぬいぐるみのようなキャラクター。その目つきや口は猫モチーフに見えなくもないが、肝心の耳や尻尾は付いていない。
初めて見たが、グッズ化されるくらいのキャラクターなら、俺が知らないだけかもしれない。
「落ちてた。うちの学校の人の落とし物だと思う」
「だな。学校に持っていけば持ち主が見つかるかも」
「じゃあこれ、もってて」
トレーディングカードの方を渡される。
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