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銃声と仇討ち
衝動的にティアへと駆け寄ろうとしたが、前にいたライレンに小太刀を持った手で制止された。銃を持った男はこちらを振り向くと、信じられないとでも言うように驚愕の表情を浮かべて目を見開いた。
その男は黒髪の短髪で、ライレンが纏っているのとちょうど同じような全身を覆い隠すローブを身に着けていた。肌は雪のように白く、体格を見なければ女に見間違えてしまいそうな顔立ちをしている。
「貴様、ライレン____!」
「!?」
一体どういうことだ、何故この男はライレンの名前を知っているのだろう。
「知ってるのか」
「知らねェ、オレの仲間に手ェだす奴は皆敵だ」
ライレンの横顔は見たこともない怒りに満ちていた。オレが次の言葉をかけようとした時には、彼はティアを撃ったと思しき男に向かって小太刀を振りかざしていた。男は襲い掛かってきたライレンに向かって銃口を向ける。
「待て!」
「伏せろ!」
背後からシオンに頭を押さえつけられ、その場にいきおいよく膝を着かされる。直後、パンパンっと二回短い間隔で銃声が響いた。
ライレンは大丈夫だろうか。顔を上げると彼は銃弾二発を軽々と躱したらしく、そのまま勢いを緩めずに男にむかって小太刀を振り下ろした。
「クソッ!!」
肩を切りつけられた男は苦痛に顔を歪め、手に持っていた拳銃を床に落とした。運よくオレの方へ滑ってきた拳銃に手を伸ばし掴むと、男はオレを睨みつけながら懐へと右手を忍ばせる。
「もう一丁持ってるぞ!」
オレの警告にライレンはうなずき、今度は姿勢を屈めて男の胴体めがけて切りかかった。脇腹から真っ赤な鮮血が噴き出す。
男を本気で殺すつもりらしい。冷たい目のまま間髪を入れずに刀を振るライレンに対し、男は体勢をふらつかせながらも二丁目の拳銃を構えた。
”パンッ”
片手で放たれたその銃弾は、ライレンのローブの右腕部分を貫いた。しかし貫かれた部位から血が噴き出すことは無く、ライレンはトドメだと言わんばかりに男の胸部めがけて素早い突きを繰り出した。
「おい待てよ!」
夏のあの日、ライレンがオレを襲ってきた男を切り伏せた時のことが頭にフラッシュバックする。またこいつは、同行者の為に殺人を犯すのか。
オレの言葉に一瞬ライレンの動きは鈍ったようにも見えたが、彼の小太刀は止まることなく男の左胸を貫いた。
「ガハァッ」
男は口から血を吐き、力なく項垂れ、その場に両膝を着いて動かなくなった。
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