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ーーあぁ、俺死んじゃったよ……。
まあ、駄目人間だったし?悲しませる存在も居ないしノーダメだよ、ノーダメ!
なんだけど……。
死の直後である記憶は残っていた。
「…………」
自分が何かに閉じ込められて運ばれているのがわかる。
死んでいるのにも関わらず。
これあれだよ、棺の中だな、と納得する恭弥。
もう少しでジワジワと身体燃やされるんだよ。
『見ろっ!火属性!』とか『モステクマ・ディフェンス』とか燃えてる身体でちょっと遊んでみたい気持ちはある。
ーーあぁ、なんか子供みたいな事を考えてるな……。
俺の葬式に誰が来てくれるかなとか、そんなことを考えていると……。
「ッ……!?」
一筋の光が差し込む。
な、なんだ?と疑問を持ちながら恭弥は必至に右手を伸ばす。
その光を手に納める様に、人間が光を求めるのが本能であるかの様に……。
「おや……?」
おや?……親か?
そんな老人の声がする。
が、彼はそんなことを気に掛けられない程の緊急事態に巻き込まれそうになった。
「ギャアアアアアアア!?痛いっで!?んんんんんん!?」
恭弥の右手に何故か大きい出刃包丁が刺さっていた。
少し切れ味が悪いのが幸いで、右手の甲をほんの少しかすったぐらいで止まっていた。
「おやおや……」
「桃から人がッ!?」
痛いけど傷が浅くて良かったよ、1週間くらいで治りそうである。
「棺を出刃包丁で切るアホが居るかああああああ!」
絶叫した。
ジェットコースターに乗っても脈拍数がちっとも変わらないで有名だった御剣恭弥も、棺を出刃包丁で壊そうとする輩が存在するとは思わなかったのだ。
「棺?棺なんてどこにあるんだい?」
「桃から人がッ!?」
「ん?」
棺を探す出刃包丁を握った婆さんに、驚かせて腰を抜かしている爺さんが目の前に居た。
ーー誰なんだこの人らは?
「まあまあお爺さんや、子供ですよ子供」
「桃から人がッ!?」
「子供?桃?」
恭弥が棺だと思っていた中身は桃だった……。
これなら桃を切った直後で出刃包丁の切れ味が悪かったのは理解した。
いやいやいや、冷静過ぎだろ……、と自分に突っ込んでみる。
自分の身だしなみをチェックしてみるとすっぽんぽんだった。
やたら世界が広く感じると思ったら、身体が子供だった……。
ーーって、俺もしかして!?
「可愛い子供ですねお爺さん」
「桃から人がッ!?」
読み聞かせをする筈だった子供と……。
「もう!お婆ちゃんちょっとうるさいわよ!」
「ツキや、子供や!子供やで!」
「桃から人がッ!?」
入れ替わってる!?
「俺……、俺……混乱してる……」
いや、恭弥の世界の話に人は桃から生まれる文化は無い筈……。
じゃあ、桃太郎の世界に転生した……?
こうして、御剣恭弥の――2度目の人生が始まった……。
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